大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

高松高等裁判所 平成7年(ネ)18号 判決

控訴人

浅野忠義

浅野美惠子

右二名訴訟代理人弁護士

中田祐児

寺﨑健作

被控訴人

有限会社大健開発

右代表者代表取締役

高橋直

右訴訟代理人弁護士

後藤田芳志

主文

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人を解散する。

三  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  控訴の趣旨

主文同旨

第二  請求・事案の概要

原判決の「事実及び理由」欄の第一・第二記載のとおりであるから、これらを引用する。(ただし、一枚目裏末行の「」」を「)」に、五枚目表一行目の「その運用状況」を「右代金を含む財産及び損益の状況」に改める。)。

第三  争点に対する当裁判所の判断

一  争点1(控訴人らの被控訴人に対する出資持分の有無)について

右の点についての判断は、原判決の第三の一(六枚目表四行目から八枚目裏八行目まで)の記載のとおりであるから、これを引用する。

二  争点2(被控訴人の解散事由の有無)について

1  前記第二に引用する争いのない事実及び右一認定の事実に、証拠(甲一八の1〜4、三七の1〜7、控訴人忠義本人、被控訴人代表者本人、認定事実末尾括弧書きの証拠)を総合すれば、次の事実が認められる。

(一) 被控訴人は、当初の設立目的であった本件土地における産業廃棄物処理場の建設が事実上できなくなった後の平成二年五月ころ、控訴人忠義の同意も得て、本件土地を含む諸物件を本四土地株式会社に三億七〇〇〇万円で売却した(甲一四)。

(二) 右売却代金は、三〇〇〇万円、七〇〇〇万円、二億七〇〇〇万円の三回に分けて支払われることになり、控訴人忠義と高橋は、三〇〇〇万円を平成二年五月ころ、七〇〇〇万円をその後まもなく受け取ったが、二億七〇〇〇万円については、控訴人忠義の知らないうちに、同年一〇月ころ、高橋が受け取った。

(三) 控訴人忠義と高橋の仲は、平成二年一一月ころ、右二億七〇〇〇万円の保管・使用方法等を巡って不仲になり、同年一二月一七日には、控訴人忠義が、臨時社員総会を開催して、被控訴人の財産状況を明らかにするよう求めたが、高橋は、これに応ぜず、逆に、控訴人らの社員としての地位も否定するようになった(甲三八、三九)。

(四) 高橋は、控訴人らの同意を得ないまま、平成三年一〇月六日控訴人らを含む取締役全員が任期満了により退任し、同年一一月五日高橋及び勉がそれぞれ取締役に就任した旨の登記をし、控訴人忠義の二〇〇口及び控訴人美惠子の五〇口の出資を否定し、高橋の出資口数二〇〇口を四五〇口に改める被控訴人の定款変更の措置を講じた。

(五) 被控訴人には、平成三年三月三一日時点で約二億円の預金が存在していたが(甲四五の1)、平成四年三月三一日には、約五〇〇〇万円に減少した(甲四五の2)。

(六) 前記(一)の被控訴人と本四土地株式会社との間の売買による税金として、平成八年以降において、一億五四〇〇万円の課税が見込まれている。

(七) なお、当審において、控訴人ら訴訟代理人が、前記売買代金の使用・保管状況の客観的資料を求めたのに対し、被控訴人は、これに応じようとしない。

2 以上の事実によれば、①当初の被控訴人会社設立の目的が事実上不可能となり、被控訴人は、もっぱら、前記売買代金残金の処理等のために存続している状態であること、②ところが、被控訴人の代表取締役である高橋においては、被控訴人の重要な財産である右売却代金の保管状況等について、社員である控訴人らに客観的資料をもって明らかにしようとしないこと、③控訴人らは夫婦で、一方高橋らは親子であるところ、控訴人らと高橋側の出資口数は、いずれも合計二五〇口であるから、両者が反目している現状では、被控訴人の業務執行や財産管理についての決定ができない状態であること、④控訴人らがその持分を他の社員や第三者に譲渡しようにも、困難な実情であることが明らかである。そうすると、被控訴人には、有限会社法七一条の二第一項所定の事由があるといえるから、被控訴人の解散を命ずるのが相当である。

三  以上によれば、控訴人らの請求を棄却した原判決は不当で、本件控訴は理由があるから、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡邊貢 裁判官 豊永多門 裁判官 豊澤佳弘)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例